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湖南が進める「両型社会」

 

建設―郭開朗副省長に聞く

建設―郭開朗副省長に聞く
 
湖南が進める「両型社会」建設―郭開朗副省長に聞く
〈長株潭都市群が両型社会建設を導く〉
 
 
 今年6月18~20日に大阪で開催された「日中韓産業交流会」に参加するため、湖南省・郭開朗副省長が日本を訪れた。中国政府が提起する中部勃興政策に合わせ、湖南省では長株潭都市群を中心に両型社会の建設に力を入れている。19日に開催した「湖南省投資説明会」では、両型社会の紹介とあわせ、省エネ・環境分野を中心とする投資誘致プロジェクトがプロジェクト(添付ファイル参照)が配布された。 
 
   
 湖南省が進める両型社会建設について、稲葉健次日中経済協会専務理事が郭副省長に聞いた。
 
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稲葉:
 湖南省は「湖江熟すれば天下足る」と言われるように、豊かな米の産地であり、また数多くの中国の指導者を輩出ています。まず、湖南省について紹介してください。
 
郭:
 湖南省は中国の中部地域に属し、洞庭湖の南側にあることから、湖南省と名付けられています。総面積は21.18万平方キロ、人口は6,800万人です。鉄道や道路など、中国の東西南北をつなぐ交通の要所ともなっています。
 
 湖南省は、春秋戦国時代は楚の国と呼ばれていました。豊富な歴史的資源に恵まれており、1970年代に長沙で、馬王堆墓という2100年前の遺跡から保存状態の良いミイラが発見されたのは有名です。そこからは多くの埋葬品も発掘されました。北宋時代から大学教育が盛んで、今でも中南大学の中に岳麓書院があります。歴史を遡れば、太平天国の乱の鎮圧に功績のあった清末の重臣・曾国藩、変法運動の指導者・譚嗣同は岳麓書院で学んでいるし、中華人民共和国設立の功労者である毛沢東、劉少奇、彭徳懐、賀龍、さらに改革開放後では、胡耀邦、朱鎔基なども湖南の出身です。また、画家の斎白石など芸術家も多い。
 
 改革開放以降、湖南省経済は比較的順調です。95年以降、毎年GDP10%以上の成長率で、昨年は前年比14.4%増の1285億ドルに達し、全国省・市・自治区の中で第12位となっています。また、財政収入は1100億元でした。
湖南省の経済基盤は建設機械をはじめとする機械、鉄鋼、非鉄金属、農業産品、タバコ、石油化学工業などの伝統産業が主ですが、最近ではバイオ医薬、IT、風力・太陽光発電、都市交通システム等に力を入れています。
 
稲葉:
 湖南省は中部勃興政策の拠点の一つとなっています。その政策における省の経済発展戦略を教えてください。
 
郭:
 湖南省政府としては、中部勃興政策に関する中央政府の要求に基づき、3つの方針で取り組もうと思っています。第1に、改革開放に力を入れ、外資企業の誘致を加速します。第2に、資源節約型社会と環境にやさしい社会の建設を進めながら、大々的な工業化を図っています。人的資源を活用し、環境保護と資源節約に力を入れていきたいと思っています。第3に、中部勃興政策の一環として、長株潭都市群が国から「両型社会(資源節約型社会、環境にやさしい社会)建設の総合付帯改革試験区」に認可されたことから、優良企業に対する優遇政策を実施していきます。長株潭都市群とは、長沙、株洲、湘潭を中心として、岳陽、常徳、益陽、婁底、衡陽を含む通勤時間半径1時間半の「3+5」の都市群です。
 湖南省の戦略目標は「富民強省(民を富ませて省を強くする)」です。その中身は、一つは「経済強省」、もう一つは「文化強省」・「教育強省」を目指すことです。長株潭都市群を中核とした両型社会建設については、すでに全体計画と18の詳細計画からなる発展計画を策定しました。省政府指導者による調整機構とその下にいくつかの担当部門を設置しました。今後は、法律・法規、財政・税制面での支援、人材育成・教育等の整備を図っていく計画です。
 
稲葉:
 湖南省での両型社会の建設は、長株潭都市群を中核として資源節約型社会や環境友好型社会を建設するとのことですが、そのための政策・措置とは具体的にどのようなものですか?
 
郭:
 これまで中国は粗放的、汚染型の経済発展でした。国は、中部地域である湖北省の武漢都市圏とこの長株潭都市圏を両型社会建設の試験区とすることで、新たな発展モデルへの転換を求めました。
 両型社会建設とは、自然環境を維持しながら都市化と新型工業化を進めることです。工業生産におけるエネルギー・資源の消費原単位と排出量を大幅に削減し、資源・環境・人口と協調的かつ持続的な発展の実現を目指します。その基本は、産業構造の調整、生活習慣の改善、工業・交通分野の改革です。5年以内に、両型社会建設関連のプロジェクト総数は1,200件、総額1兆元の資金を投入する計画です。
 長株潭都市群の中で、重点的に開発を行う中心地区を設定しました。中心地区の面積は都市群全体の22%を占める6162平方キロです。「一心両軸両地帯」という生態環境に配慮した開放的な立体的発展を目指す構想があります。長株潭3市の境にある三角地帯を「一心」として生態経済区を建設し、物流に欠かせない長沙-株洲高速道路東線と湘江の「両軸」を整備し、先端製造業・ハイテク産業・現代サービス業の総合的発展に重点を置く北部地帯と基幹産業の強化を狙う南部地帯を「両帯」とするものです。 
 
 
稲葉:
 私が理解するところでは、すでに産業発展を遂げた沿海部では、環境汚染が広がり両型社会の建設が難しいため、今後発展する中部地域において、両型社会を建設することが可能ではないかとの判断で、試験区として中央政府から認定されたのではないでしょうか。

 また、過去、日本も公害問題を抱え、それに対応するために努力を重ねた結果、新たな産業が興りました。先日の日中韓産業交流会では多くの環境改善プロジェクトが紹介されました。湖南省が行う両型社会建設では、経済発展と環境を調和させる産業の育成に努力していると理解しています。
 
郭:
 経済発展と環境・省エネは矛盾するものではなく、両立できるものと思います。湖南省では、両型社会建設の新たなモデル作りを試験的に進めていますが、その過程で日本の技術や経験を学ぶことができればと思っています。
 
稲葉:
 日本企業では、すでに三菱自動車工業、ヤマハ発動機等の企業が湖南省に進出し、自動車や二輪車を生産しています。また、風力発電企業も進出しているようですね。郭副省長から日本経済界へのメッセージがあればお聞かせください。
 
郭:
 今回、日中韓産業交流会に参加した目的は、日本の両型社会建設の経験と政策を学ぶのとともに、省政府が実施している長株潭都市群の両型社会建設に関する情報を伝えるためでした。
 日本経済界に対しては、まず、湖南省と日本の地方自治体や日中経済協会など関係団体と、両型社会建設に関する具体的、長期的な協力体制を構築したいと思っています。次に、日中経済協会を通じて、省エネ・環境分野等の企業に湖南省に来ていただき、政策や具体的プロジェクトを紹介したいと希望しています。
 現在、国が循環経済の発展計画を進める上で行っているように、湖南省としても日本の地方政府(県)からの循環経済に関連する計画・政策の策定や人材育成などへの協力をお願いしたいし、また、日本企業との間で具体的プロジェクトの実施や金融支援協力などを行うためのプラットホームを構築したいと思います。
 
稲葉:
 省エネ・環境分野での協力が深まることを期待しています。ありがとうございました。
 
08年6月22日 グランドプリンス赤坂・李芳にて
(まとめ:企画調査部 高見澤学) 
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