【広西チワン族自治区概要】
Ⅰ.概況
1.基本情報
広西の名は広南路と呼ばれていた嶺南一帯(広東・広西)が宋代に広南東路と広南西路に分かれ、広南西路がのちに広西路と呼ばれたことに由来する。58年に広西省から現在の名称に改称。略称は「桂」。
2009年、広西チワン族自治区の人口は、4,856万人。首府の南寧市は698万人、桂林市は512万人。
同自治区の面積は、23万6千k㎡で、日本の本州と同程度の広さであり、中国全土960万k㎡の約2.5%を占める。
同自治区は、熊本県と友好都市関係にあり、桂林市は、熊本市、茨城県取手市、兵庫県加古川市並びに石川県小松市と、北海市は熊本県八代市と友好都市関係を締結している。
2.地理
西は雲南省、北は貴州省、湖南省、東は広東省と接し、南は北部湾(トンキン湾)に面している。東西北は標高1,000~1,500mの山地に囲まれた盆地であり、区の面積の半分は石灰岩地帯で、桂林市に代表される山水景勝地を作っている。中国西部の12省・自治区で、唯一の沿海地区である。
南西はベトナムと637kmの国境を接しており、中国における対ASEAN経済交流の最前線地域である。
南寧市からベトナムの首都ハノイまでは360km、広東省広州までは600kmの距離にある。
首府の南寧市は、一年中花が咲き、常緑の木々に溢れており、「緑城(緑の街)」と呼ばれる。
3.気候
亜熱帯性モンスーン気候で、夏は高温多湿、冬は温暖。
9月の平均気温は南寧市で27℃、桂林市で25.7℃で、東京(23.2℃)と比べて暑い。
9月の降水量は南寧市122mm、桂林市77mmであり、東京(180mm)よりも雨量が少ないが、5月から9月はスコールがたびたび降り、7月から9月は台風のシーズンにあたる。
4.民族
同自治区は、多民族地域であり、チワン族、瑶(ヤオ)族、苗(ミャオ)族をはじめとする12の少数民族が住んでいる。区内の少数民族人口は1,923万人で、チワン族人口は1,650万人で(以上2008年)、区内総人口の約3割を占める。チワン族は、中国の少数民族の中で最大の人口を持ち、その約9割が区内に居住している。
衰退する清王朝と、アジアへの勢力拡大を図る列強との狭間で起こった太平天国の乱(※)や、国共合作崩壊後の鄧小平による右江革命根拠地(※)の創設運動は、広西で起こり、多くのチワン族が参加し、革命的伝統が称えられる。
※太平天国の乱…清代末期の1851年、洪秀全(客家)を指導者として、広西省桂平県金田村で起こした反乱。洪秀全は、太平天国という新国家樹立を宣言し、天王として君臨した。1853年には南京を占領し、天京(てんけい)と改め首都とした。キリスト教思想のもとに、清朝打倒・土地私有反対・経済的平等をうたったが、56年頃から内紛が激化し、1864年鎮圧された。
※右江革命根拠地…国共合作崩壊後の1929年、上海の共産党中央は、広西地区に革命根拠地を創設することを計画した。 指令を受けた鄧小平が、ベトナムのハイフォン経由で百色市に潜入し、チワン族農民指導者 韋抜群とともに百色蜂起を引き起こし、「右江ソビエト政府」を樹立。さらに翌年には左江も占領し、左右江ソビエト地区を形成した。