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JCEAニュース

 

中国経済の景況と改革実行の観察

中国経済の景況と改革実行の観察
 

 当協会は、岡本理事長をはじめ、役職員が北京や中国地方政府幹部等との面談・交流を通じ、中国経済の諸相と地域毎の景況や改革の進捗につき、直接に政策当局者から話しを聞くとともに、各種経済指標や国務院・各省の重要発表等をフォローしてきました。
今回、岡本理事長が、添付のとおり「中国経済の景況と改革実行の観察」と題し、レポートにまとめましたので、会員企業の皆様にご報告いたします。最近の中国経済を知る一助となれば幸いです。

 

 

≪要約≫

 

 

1.徐紹史発展改革委員会主任は827日全人代常務委員会で17月マクロ経済運営、及び全面的改革深化実行の実績に関する詳細且つ包括的報告を行った。また、同日楼継偉財政部長も全人代常務委員会に17月期の予算前倒し執行、歳入及び今後の財政政策について報告した。これらは、中国の実体経済ファンダメンタルズと政策の動向を理解する上で重要な情報である。

 

2.最近、中国の株価下落等を契機に、電力消費量、鉄道貨物輸送量等の低迷・減少などに着目して、中国経済の先行きに対する極端な悲観論が俄かに強まりつつある。事実、中国経済は過剰生産能力、過剰債務、環境問題、生産年齢人口の減少と人件費の高騰など山積する課題に直面している。他方、中国当局は、これらの課題の存在をつとに認識し、足下のマクロ経済の安定を図るべく限定的な景気対策を講ずる一方、より根本的には需要面で投資・輸出主導から消費主導に、供給面でイノベーションによる生産性向上を旨とする「経済発展モデルの転換」を目指し、これを達成するに必要な改革のアジェンダ「全面的改革の深化」の実行に取り組んでいる。

 

3.冒頭に紹介した徐主任及び楼部長の報告は、これら一連の取組みの進捗状況を整理したものである。これを通読して重要と思われる諸点に、日頃中国中央・地方政府幹部等との面談・交流や協会スタッフによる経済指標、国務院・各省の重要会議等のフォローから得られた関連情報を合わせて、以下3点につき、ご参考までに私見を報告する。異論ご批判を歓迎致します。

(1)中国のGDP成長率と電力消費量、鉄道貨物輸送量データとの「落差」を理解する上での構造変化。

(2)中国経済は当面7%6%程度の中速成長可能性、その大きな支えは中国中央政府の財政余力。

但し、税収等歳入の伸び率鈍化の一方、社会保障・教育、環境等歳出需要急増に鑑み、今のやり方は長く続かないであろう。

(3)上記当面の間に「改革」実行による潜在成長率向上と財政の持続可能性確保の成否が中国経済の将来展望を左右。約11兆ドル中国経済の中速成長如何は、日本、アジア、世界の経済に影響大故、「改革」の実行を期待、注視。

日中経済協会理事長 岡本巖

 

 

1 GDP成長率と電力消費量データ等との落差の背景に「構造変化」

 

 

(1)エネルギー原単位の改善

中国は省エネが遅れ、鉄鋼等エネルギー多消費産業のウエイトが高い「粗放的」産業構造であった。これを改善すべく、2006年からの11次5計において、GDP単位当たりのエネルギー消費量を20%削減するとの「拘束性(binding)目標」を設定。この目標は各地方政府、主要企業・機関に割当てられ、未達の場合、当該ユニットの責任者が咎められるという位置づけ。11次5計の実績19.1%

125計の目標は16%低減。これまでの実績:2014年末までに累計13.9%減。更に2015年上期で前年同期比5.9%。上記エネルギー原単位の改善は、省エネに加え、サービス産業の急伸等産業構造の高度化によるもの。本年17月電力消費量は前年同期比0.8%増、GDP成長率7%、エネルギー原単位5.9%改善。

 

(2)鉄道輸送の最大貨物石炭・鉄鉱石の輸送量激減

17月中国の鉄道貨物輸送量が前年同期比10.2%減。中国鉄道の最大の貨物は石炭(全体の約4割)及び鉄鉱石・鉄鋼製品(同約2割)。石炭は、近年のCO2排出削減及び大気汚染を背景に天然ガスや再生可能エネルギーへの転換が加速。昨年は遂に石炭消費量が前年比減少に転じた。今年もこの傾向は継続、その一端を示すものとして上期の石炭輸入量は前年同期比38%減の約1億トン。鉄鉱石・鉄鋼製品についても、過剰生産能力問題と不動産投資の低迷を背景に需要・生産が低迷。以上の他道路輸送へのモーダル・シフトもある。

 

2 2015年上半期のマクロ・パフォーマンスと経済政策執行状況

 

 

1.消費堅調:上半期7%成長への寄与度6

消費は10.4%増と堅調な伸び。成長への寄与度が前年同期比5.7ポイント高の60%に達し、消費主導の成長パターンに前進。その背景として、以下の諸要因。この中には必ずしも一過性ではない消費環境の改善もあり、注目。

全国平均可処分所得が経済成長率を上回る伸び率(7.6%)で増加。

年金、医療保険等社会保障及び教育など公共サービスの拡充。

 (注)17月全国社会保障・雇用予算支出21.4%増、教育予算支出16%増。

2014年来のブロードバンド通信施設の建設加速を背景に、4G使用家庭数が昨年末の1億戸から本年7月末には2億戸へと急増。これを含むインターネット人口6億人強に支えられ、E-コマース前年同期比37.7%増などICT関連サービス産業が急成長。

住宅ローン規制の緩和及び減税等により、分譲住宅販売面積が、第1四半期マイナス9.2%から17月期はプラス6.1%増に回復。

観光収入12.4%増、映画館収入48.2%増、老人1,000人当たり介護ベッド数10%増など新たな消費ニーズ。

EV充電施設建設加速、EV販売台数前年同期比2.6倍。

 

 

2.投 資:足下で下振れ圧力強く、政策により「第2エンジン」の役割

17月固定資産投資前年比11.2%増。うち、インフラ投資18.2%増。

 

(1)政策対応

春先からの減速懸念に対応すべく、財政と金融政策による限定的な景気刺激策。

対象を重点分野絞り込み:通信・電力・石油ガスのネットワーク・インフラ、環境保護、食糧・水利、都市軌道交通、新興産業、製造業の核心競争力増強、現代物流

このほか民生改善目的も合わせ社会保障性住宅517万戸新規着工、都市バラック地区改造事業への補助及び開発銀行低利長期融資

 

(2)公共投資予算の前倒し執行

既存投資予算の執行を督励しつつ、7月までに今年度の中央から地方への移転支出予算のほぼ全額を地方政府に下達。重点プロジェクトについて16年度計画の一部を年内に前倒し下達。

 

地方政府財政への支援

地方政府債務の年内償還額(1.9兆元)を多少上回る3兆元の借換起債枠を承認。国債に準ずる金利及び償還期限での地方債発行により、負担大幅減。加えて別途0.6兆元の新規事業起債枠を承認。更に、地方政府が事業主体となるバラック地区改造に対し、政府補助金及び開発銀行からの超低利、長期資金、融資。

 

(3)穏健な金融緩和

今年に入って4回預金準備率引下げ、4回の利下げ。7月末M2残高は前年同期比13.3%増。3月全人代時の目標12%増を若干上回っている。

6月の企業向け平均貸出金利は6.04%と前年同期比0.92%ポイント低下。

政府は、重点分野プロジェクトやPPPモデル・プロジェクトへの資金調達確保のため、金融機関に対する融資慫慂、地方借換債の引き受け指導を行う他、企業債券の発行基準を緩和。

 

 

3.全面的改革深化の実行

生産年齢人口が減少する中国経済の中長期的な安定成長持続の為には生産性の向上、経済全体の効率向上が決め手。これに向けた全面的改革の深化について、以下のような前進がある。

(1)イノベーション駆動(driven)発展戦略の進捗

 

①大衆起業、万人革新(イノベーション)

李克強総理が今年の国政報告で公共サービスの拡充と並ぶ二つのエンジンの一つと位置づけた「大衆による起業・革新」を促進するため、起業手続きの簡素化、投融資の拡大、インキュベーター、エンジェル等の施策を実施。その結果17月期起業が件数で、17.4%、登記資本で41.6%増。

(注)主要国の最近の開業率:中国15%、米国13%、独5%、日本4%

②研究開発:17月国内発明特許件数、前年同期比56.7%

(注)中国の研究開発支出の対GDP比率:20001%→20142.1%

 

「インターネット+が広範囲に展開

インターネット、クラウド、Big DataIoT等と現代製造業との融合をはじめ、電子商取引、ネット金融、高効率物流など新業態、新ビジネスモデルが続出。

 

雇用情勢

上記起業による雇用創出効果も有り、17月都市新規就業増841万人、失業率4.04%と雇用情勢安定。

 

(2)産業構造の調整とグレードアップ

 

過剰生産能力の解消

国務院も重視し指導意見。対応方向は、立ち遅れた企業・設備の淘汰、一部は他業界へ転換、一部はグレードアップ。税制、金融、雇用の政策投入により企業の再編統合を促進。地方の雇用、税収問題が要。

(注)河北省の鉄鋼等過剰生産能力削減と北京市の「非首都機能」移転政策による工場、事業場の河北省移転と連携の例。

能力削減実績2013年から14年末迄に鉄鋼37百万トン、セメント1.5億トン、アルミ60万トン、ガラス6千万重量箱削減。これは第一歩。

②サービス産業の急成長:サービス産業の付加価値8.4%増、GDPに占めるウエイトは49.5%に達し、前年同期比2.1%ポイントUp125計では年率平均1%ポイントUpを想定していたのに比して急速な成長。これがGDP成長を牽引し、同時に雇用機会を創出。

産業のグレードアップ:「中国製造2025」及び製造業核心競争力増強3年行動計画の始動により、17月期ハイテク産業の付加価値10.4%増と、工業全体平均より4.1ポイント高い。

 

(3)改革開放

 

行政の簡素化・権限委譲

行政審査、許認可の縮減又は下方委譲すると共に、法律に基づかない審査や許認可を取り消し、強制的仲介サービスの全廃。投資案件についてのオンライン認可申請、関係機関の審査・認可・管理監督もオンライン・プラットフォームで連絡・調整。

 

②価格決定の「市場化」促進

政府が価格を決めていた品目を6割削減。主なものとして、殆どの医薬品の価格を自由化、産業用天然ガス価格の自由化、電力託送料金改革のテスト実施。

 

③金融システム改革

貸出金利自由化、民営銀行設立解禁、インターネット金融促進、銀行預金金利の変動幅拡大、預金保険制度創設等間接金融について進展がある一方、準備を進めていた資本市場改革は株価下落対策で凍結。

人民元基準レート設定方式変更は、人民元のSDR通貨バスケット編入を目指してIMFの示唆に沿った側面あり。

 

(4)国有企業改革ガイドライン(指針)の発表

913日、国務院が待望の国有企業改革指針を発表。景気下振れリスク、株価下落の状況下にも関わらず、「全面的改革深化」のアジェンダ中で最も困難な国有企業改革の指針を発表したこと自体が改革のモメンタム維持を示すものとして評価。

2020年までに改革の「決定的成果」を出すことと明示されていることから、この指針を踏まえ今後国有資産管理委員会、発展改革委員会、財政部等の関係省が「実施省令」を出すものと予想。事業分野の特性に応じて民間参入、競争導入等の程度・態様は異なるであろうが、経営効率の向上、収益力の改善に実効あるものとなるか否か注視。

 

(5)財政改革

社会保障、教育、環境対策等歳出需要が急増する一方、成長鈍化等に伴い歳入の伸びが低下する気配あり。政府は、地方政府の予算管理及び借入れ管理強化の立法を行うとともに、財政遊休資金の活用、地方起債枠拡大、PPPの活用等種々工夫しつつある。

②楼財政部長の全人代報告においても言及されている通り、歳出予算管理制度の改革と合わせて、消費税及び所得税の改革を含む税制改革を行うことによって、財政の持続可能性を確保することが喫緊の課題。

以上

 

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