一般財団法人日中経済協会は、対中交流実績と豊富なノウハウ・人脈で、御社の中国ビジネスをサポートします。

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日中経済産業白書 2014/2015

   
日中経済協会の新刊案内
日中経済産業白書 2014/2015
―新常態への移行が求める中国ビジネスの挑戦―
 
   
当協会は、2014年~2015年の日本と中国の経済関係の動向と展望を総括的にとりまとめた『日中経済産業白書2014/2015-新常態への移行が求める中国ビジネスの挑戦-』を2015年6月30日に刊行されました。

本白書は、対中ビジネスにおける各専門家で構成される当協会の経済交流委員会が日中経済交流分野を産業別に執筆し、1974年以来、我が国唯一の年次レポートとして毎年欠かさず刊行してきたものです。

本『2014/2015』版は、2014年の中国の政治経済動向の解説に始まり、日系企業のビジネスチャンスなどにも焦点をあて、製造業、サービス業等をはじめとする中国の各産業セクター別の動向を詳細に解説しております。

また、改革深化の具体化、新常態、そして大きな関心が寄せられている外商投資産業指導目録改訂などのトピックを念頭に執筆されています。

豊富なデータを通して、日中経済交流の趨勢が把握できる資料ですので、ぜひご一読くださいますようお願いします。
 

 
  • B5 判・275 ページ
  • 定価:本体 4,000円、会員価格:本体 3,000円(税別・送料別途実費)
  • ISBN 978-4-88880-220-8
 

◆ 本書の特長

◆ 本書の特長
 
  • 2014~15年の日中経済関係・中国注目27産業の動向と展望を217点の図表と豊富なデータにより総括!
  • 対中ビジネス専門家で構成される日中経済協会・経済交流委員会責任執筆・編集!
  • 2014/2015版は、「新常態」下での改革深化の方向性、外商投資産業指導目録改訂、第12次五カ年計画期間の総括と第13次五カ年計画を見据えた産業振興の方向性など最新トピックにも焦点!
  • 日中間の経済交流と主要産業動向及び展望を包括した我が国唯一の年次レポートとして、1974年以来毎年欠かさず刊行!
 

◆ 本書の構成

◆ 本書の構成
 
章名をクリックすると各章の要旨やキーワードが表示されます。
うまく表示されない場合は、以下のPDFファイル(359KB)をご参照下さい。
 

第1部 2014年の政治経済動向

第1部 2014年の政治経済動向
 
第1章 政治経済動向
2014年11月、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の開催期間中の北京でおよそ3年ぶりの日中首脳会談が行われた。これを機に停滞していた政府当局者間の接触や対話も復活し始めた。国際的な政治・経済環境の変動が続くなか、安定的な日中関係の再構築が何よりも求められる。14年の日中貿易は輸出入ともほぼ横ばいで推移するなか質的な転換も目立った。旅行やアウトソーシングなどを通じた両国のサービス貿易は拡大基調を続けている。中国の内政では反腐敗キャンペーンを通じ、習近平政権は予想よりも早く権力基盤を築き上げつつある。国内経済は高度成長から安定成長への転換が目に付く年となった。15年の経済成長率が7.0%と設定されたのもその一例である。対外経済に目を転じると改革開放以来30年以上資本輸入国であった中国が、近い将来資本輸出国に転じることが確実な情勢となってきた。こうした中国の新常態(ニューノーマル)への対応が日本の中国ビジネスにとっての大きな課題といえる。

Keywords: 日中関係、サービス貿易、習近平政権、新常態、資本輸出
 
第2章 日本の対中直接投資と法制度改革動向
2014年の日本の対中直接投資(商務部統計、実際利用額)は前年比4割近い減少となった。その背景と今後の見通しは日中双方の関心事項となっている。日本の代表的なアンケート調査では、賃金などコストの上昇、品質管理、法制運用の不統一、知財権保護などが解決されるべき課題に挙げられている。このうち制度改革の実行が解決策となり得る法制運用の不統一と知財権保護は、党18期3中全会の「全面的改革深化の決定」及び4中全会の「全面的依法治国推進の決定」のもとで、14年から15年にかけても法制度などの改革が深化・推進されつつある。その動向は、事業投資の予見可能性を高めるうえで極めて重要である。

Keywords: 依法治国、外商投資産業指導目録、外国投資法、知財権保護、独禁法
 

第2部 中国ビジネスの新しい可能性

第2部 中国ビジネスの新しい可能性
 
第1章 新型都市化
中国が現在進める新型都市化は、政策的な方向性と数値目標を伴ったもので、過去の単なる都市開発、都市拡大とは一線を画したものといえる。ただその推進には中国社会の経済的、社会的な切り口の変革が求められることは間違いなく、その代表は戸籍制度改革であろう。中国政府は64の具体的行政区域を指定しパイロットプロジェクトを走らせ始めており、今後は資金供給や全体の進展状況を注視すべきだと思われる。新型都市化の進展と不動産市場の動向は密接に関わっているが、政府の適切なコントロールが今後の進展には欠かせない。このほかのキーワードの1つとしてスマートシティがあげられる。数年前から注目を浴びている言葉ではあるが、現状は資金不足や統一的基準が整備されていないことにより、具体的な建設には停滞が見られるようである。各地域に様々なレベルでの取り組みが存在する模様であり、幅広い情報収集は欠かせず、一歩踏み込んで日本のノウハウの提供や交流も有用と思われる。

Keywords: 戸籍制度改革、都市化パイロットプロジェクト、資金供給、スマートシティ
 
第2章 流通
消費支出の拡大は流通産業にとっては追い風となるが、消費の構造には変化が生じている。贅沢消費は抑制されつつある一方、健康や安全など付加価値の高い商品に関心が集まっている。このような消費の構造にも影響を与えているのがインターネット販売(ネット販売)である。ネット販売の急速な拡大は既存業態にも大きな影響を与えてきたが、近年は既存業態とネット販売の融合が模索されてきているのが特徴である。既存業態はネット販売に対応する為に、小商圏型の小型業態の開発などを進めている。また企業レベルでは、従来中国の小売市場をけん引してきた外資系小売業の成長が鈍化し、内資系小売業が台頭してきていることも大きな変化である。特に地方都市の中小小売業で規模は小さいものの地域密着の品揃え・サービスによって外資系などとの競争にも対応できている企業も出てきている。消費や流通の変化は日系小売業の中国における展開に追い風となる可能性がある。2014年は日系小売業の中国進出が進んでおり、進出企業も拡大を模索する傾向にある。また、今後の日系小売業の中国展開については、日本のインバウンド需要を見据えた相互送客のような取り組みも増えていくことになるだろう。

Keywords: 小売業態動向、百貨店、ハイパーマーケット、家電量販店、インターネット販売
 
第3章 シルバー産業
高齢化が進む中国にとって、シルバー産業の振興は重要な政策課題であり、「在宅を基礎とし、社区(コミュニティ)を拠り所とし、施設を支えとする」という政府方針に基づいて関連の法規・制度が急速に整備されている。また、各地でさまざまな事業展開が加速しているが、とりわけ「養老機構(高齢者向けに生活支援・リハビリ・医療などのサービスを提供する施設)」については、デベロッパー・保険会社・投資会社・その他異業種などの多くの国内民間資本による大規模な投資が相次いでいるほか、外資奨励策も講じられている。さらに、注目される政策が「医養結合(医療機関と養老機構などの連携)」であり、2020年に向けて医療とリハビリ・介護が一体となった市場の形成と拡大が確実視される。こうした動向を概観するとともに、現地で調査した実例を踏まえながら、日本企業による中国でのビジネスの可能性をまとめた。

Keywords: 医養結合、人材、アクティビティ、要介護、ハイエンド
 

第3部 資源・エネルギー・環境

第3部 資源・エネルギー・環境
 
第1章 石油・天然ガス
中国の石油消費の伸びは2013年に続き鈍化している。輸送部門におけるガソリンやジェット燃料の消費は好調だが、軽油の消費が低迷している。石油消費の伸びは(1)経済の減速や経済構造の変化、(2)エネルギー効率の向上、(3)環境政策(大気汚染・気候変動)などの原因により鈍化している。天然ガスは環境政策の推進により発電・熱供給、交通輸送、家庭用消費が伸びた。2014年も石油に比べ消費は伸びているが、増加率自体は2010年以降若干鈍化傾向にある。特に2014年の消費・輸入の伸びは過去最低であった。需要・輸入の伸びが鈍化した要因として価格統制、値上げ、油価の下落があげられる。

Keywords: 石油、天然ガス、需要鈍化、価格、税制
 
第2章 石炭
経済減速と大気汚染改善に対するプレッシャーから中国での石炭の消費量と生産量が前年割れとなった。国際的な石炭の供給過剰から石炭価格も下落の一途をたどり、中国の石炭企業は大半が減益となり、厳しい経営環境にさらされている。このため、石炭資源税の改革により、石炭企業の負担の軽減が図られている。また、国内資源保護の立場から進められてきた国内炭の輸出抑制と海外炭の輸入促進もここにきて状況が一変しており、海外炭の輸入抑制のための措置が講じられている。石炭の過剰生産や安全生産を目指して進められている生産の集中化も思うように進んでおらず、さらなる対策の強化が必要となっている。

Keywords: 生産過剰、石炭価格、石炭輸入関税、安全生産、石炭資源税
 
第3章 電力
世界トップの発電大国である中国は着実に発電設備の増強を行っているが、需要の伸びの鈍化により、短期的には需給は緩和傾向にある。政策面では電力体制改革を深化させるとともに、他産業も含め大気汚染対策の更なる拡充を図る。また電力価格に対する市場メカニズム導入への取り組み、2020年を見据えた新エネルギーの導入・石炭火力利用のクリーン化(発電効率の改善・大気汚染物質の削減)が促進されていくこととなろう。特に、石炭火力の大気汚染物質の排出濃度については、一部先進国より厳格なガス火力並みの基準の順守を求められており、今後の対応が注目される。電力会社の2014年の経営実績は、需要の伸びが鈍化する中ではあったが、発電設備構成の6割強を占める石炭火力発電の燃料である石炭の市況低迷もあり、高収益であった。

Keywords: 電力需給緩和、電力体制改革、環境(大気汚染)対応
 
第4章 鉱物資源
2000年代から爆発的に伸長した経済成長と資源需要に対応すべく推進してきた鉱物資源戦略の結果、中国は生産・消費の両面で大きな影響力を有することとなった。しかし2014年、その自らの政策により負の影響に直面した。供給国としては、レアメタルの資源保護、高付加価値化、価格決定権の掌握を目指し規制を進めた結果、一時的には絶対的供給者の地位を享受したものの、消費国から国際貿易機関(WTO)提訴を受け、国内では横行する違法採掘と環境破壊を統制しきれずに政策変更を余儀なくされた。消費国としては、近隣国から莫大な量の資源を輸入し続け、国内に原料が不足する資源でも生産・消費ともにトップとなった一方、資源国において資源ナショナリズムの高揚と政策の急進化をよびおこす端緒となり、ニッケルなど資源の調達先変更や採算性が不透明な製錬事業のインドネシアへの進出に迫られた。これまで破竹の勢いで鉱物資源戦略を進めてきた中国は、今後他国への影響力を考慮しての政策執行が求められている。

Keywords: 鉱物資源、レアメタル、レアアース、高付加価値化、WTO
 
第5章 環境
2014年11月、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議期間中の北京には青空が戻ったが、その後は京津冀(北京・天津・河北)地区を中心にスモッグが頻繁に発生している。抜本的な課題解決のためには、14年からスタートした大気汚染防止行動計画の着実な実行、改正・環境保護法の施行、大気汚染防止法改正に向けたプロセスなどが重要である。14年にはまた、日中首脳会談再開による日中関係改善の最大かつハイレベルのイベントとして「第8回日中省エネ・環境総合フォーラム」が開催された。これらのポイントをレビューする。

Keywords: APECブルー、PM2.5、黄標車、汚染物質排出費、排出インベントリ
 

第4部 素材・機械

第4部 素材・機械
 
第1章 鉄鋼
中国の粗鋼生産は2年連続の8億トン超と依然世界最大の規模を誇るが、伸び率は大きく鈍化し、15年年明け以降は前年割れが続く。その最大の要因は、「新常態」による経済成長の減速が、鉄鋼内需の要である建設投資や製造業の生産活動などを鈍らせるなか、能力拡張が過去10年にわたる政府の指導方針に逆らうよう進んだ結果、国内の需給ギャップを一層拡大させ、内需主体の一部鉄鋼メーカーの生産意欲を削いでいることが大きい。中国政府は、鉄鋼業の過剰生産能力とその副作用である環境汚染の取り締まり強化に乗り出し、生産能力が過剰で、かつ排出量の過大な一部地方政府に対し、期限を設けた削減量の割り当てと環境規制措置を講じている。これに対し、各地方政府は一部老朽設備の強制的閉鎖には応じたものの、需給ギャップを埋めるために実質的な削減効果を求めるべき地方国有メーカーへの対応までは踏み込んでいない。17年をターゲットにした過剰生産能力の削減が政府の思惑通り進むのか、あるいははかばかしい成果を上げられず、国内で消化しきれない過剰能力としてそのまま海外へ流出・拡散するのか、今後の動向は大いに注目される。

Keywords: 「新常態」で鉄鋼内需はピークアウト、10年にわたる改革指導方針と現実のギャップ、過剰能力削減の壁となる地方国有メーカー、高品位シフトが内外市場へ影響拡大も、輸入依存高まる鉄鉱石市場
 
第2章 化学工業
中国の石油・化学工業の売上総額は2014年、前年比6%増の約14兆元となった。主要製品生産量は総じて前年を上回り、エチレンは前年比7.6%増の1,704万トンと史上最高を記録した。総生産能力の拡大や、堅調な需要が下支えした。中国石油・化学工業連合会(CPCIF)では15年の石油・化学工業の売上総額について7%増の15兆元前後と予測している。経済全体に下振れ圧力が指摘されるなか、石油精製、ソーダ工業、一部合成繊維原料をはじめとした設備過剰の解消に至っていないほか、一層の環境対策の徹底など、中国の石油・化学工業にとって解決すべき課題は多い。一方で需要は総じて盛り上がりを欠いており、伝統的製品を中心にメーカー収益が厳しいレベルで推移している分野も少なくない。資源やエネルギーを大量に消費し環境に負荷をかけつつ汎用品の供給に力を注いできた従来の形態から、省資源・省エネルギー・環境対応に重点を置いた差別化製品・高付加価値製品、換言すればファインケミカル製品へのシフトが中国の業界でも志向されている。同時に、石炭化学を中心とした原料多様化も着実に進展している。

Keywords: エチレン、パラキシレン、設備過剰、環境対策、石炭化学
 
第3章 工作機械
2014年の世界の工作機械生産額は15年3月時点で未発表であるが、686.5億ドル(前年比9.0%減)となった13年よりも増加しているとの見方が強い。13年の減少傾向は世界的な景気後退により、生産財である工作機械の需要が縮小したことに伴うものであるが、14年は中国における景気後退がみられたものの、世界的には回復基調にあるなかで前年比プラスに動いていると見られる。このなかで、中国工作機械産業は大手メーカーによる積極的な海外展開や企業間連携、技術の高度化といった動きが目立ち、一層の飛躍が認められた。また日本の工作機械産業にとっても、中国のスマートフォン事業や自動車産業への製品投入により、輸出先としての中国が強く意識される年となった。

Keywords: NC機、海外展開、企業間連携、省人化、国際化
 
第4章 産業用ロボット
国際ロボット連盟(IFR)によると、2014年における世界の産業用ロボット販売台数は22.5万台、前年比27%増と急伸した。この伸び率の高さは主に中国と韓国における販売台数の急増に起因するものとしており、特に中国では同54%増の5.6万台の産業用ロボットが販売されたと報告している(数字は速報値)。このうち、中国地場メーカーの販売台数が1.6万台と国内市場の約3割近くを担った結果となったことは注目に値する。12年頃まではほとんどゼロに近かった地場メーカーの販売台数が1万台を超えたことは、中国の産業用ロボット産業が発展している証とも言えるだろう。また、13年末に工業信息化部から産業用ロボット産業の発展促進に関する方針 が発表されたこともあり、中国では今後もロボット産業に注力していくものとみられる。

Keywords: 構成部品、地場メーカー、外資系メーカー、システムインテグレーション、システムインテグレーター
 
第5章 建設機械
2014年の中国建設機械(建機)の需要は、主要7機種合計で、20万2,500台と推定され、前年比22.7%減と大幅な減少を見た。2011年5月から始まる前年割れは2013年前半に漸く下げ止まり、回復に転じていたものの、2014年は年頭から再び前年割れとなっている。世界市場に占める中国の比率は2014年に13.2%とピーク時の3分の1に落ち込んでいる。中国の建機市場は投資需要と石炭需要に大きく影響され、政策当局の経済成長目標の区間コントロールによって当面は大きな改善が望める状況にはないが、むしろ長い目で見て健全な業界に脱皮するチャンスではないか。その中で明るい材料が鉄道固定資産投資である。鉄道固定資産投資は2012年から3年連続で前年比プラス成長を続け、今後とも特に西部地区での好調な投資が期待される。油圧ショベルの外資メーカーは前年比19.7%減、中国メーカーは前年比20.6%減となり、ともに大幅な減少を余儀なくされた。また外資メーカーと国産メーカーの構成比は、国産が44.2%と前年レベルで推移している。

Keywords: 前年割れ、投資需要、石炭需要、区間コントロール、鉄道固定資産投資
 
第6章 自動車
中国自動車市場の規模は2年連続で2,000万台の大台を超えた。広大な面積と巨大な人口のために普及はそれほど進まない。にもかかわらず、すでに様々な問題が起きている。自動車もその責任の一端を担う深刻な大気汚染は、突如現れたわけではないが、大都市を中心とした自動車の総量規制や走行規制に拍車をかけている。中国政府は企業集約に執着しているが、合弁企業依存の拡大が続いている中で、地場産業および自主ブランドの成長は進んでいない。日系合弁企業は地盤沈下が進み、日中関係の険悪化はそれに追い打ちをかけているが、日系企業が再度躍進するために複数の課題を解決する必要がある。高級車需要が旺盛なことから、自動車輸入は4年連続して100万台を超えた。輸出は2008年のリーマン・ショックから回復して100万台前後に達したが、製品価格の低さ、場当たり的な性格からの脱却にはまだ時間が必要である。オートバイ産業の経営環境は国内では走行規制、電動車の追撃、輸出では世界経済不調の影響があり、ともに難しい局面にある。自動車産業のピークが来るのは違いないが、それはいつ、どんな規模なのか、今後の行方に細心の注意を払う必要がある。

Keywords: 自動車保有率、大気汚染、企業集約化、日系合弁、オートバイ
 

第5部 電子機器・IT

第5部 電子機器・IT
 
第1章 電子情報機器・家電
2014年の電子情報製造業の売上高合計は10.3兆元で前年比10.5%増であった。依然高い成長率ではあるが伸び自体は鈍化傾向にある。にもかかわらず、売上高と利潤総額が工業全体に占める比率は上昇しており、全国の工業をリードする役割は維持している。業種別では通信機器と電子部品・デバイスが大きく伸長したが、AV(音響映像)家電、コンピュータの成長は鈍化した。投資は通信機器、中西部、国内資本企業を中心に拡大した。国内市場は中西部を中心に拡大した。国内生産の携帯電話のうち70%はスマートトフォン(スマホ)となり、また、カラーテレビのうち40%はスマートテレビとなるなど、製品の高度化も進められている。輸出の成長は鈍化したが、輸入が減少したことから貿易黒字は拡大した。パソコン(PC)では聯想(Lenovo)が世界第1位を確保したが、他社は後退している。携帯端末では、出荷量世界上位10社のうち5社が中国企業となり、その伸長は著しい。テレビは輸出が伸長したが補助金の打ち切りなどにより国内販売が減少し、トータルには停滞し、異業種と融合が進行している。白物家電ではエアコンが激しい価格戦によって出荷台数を伸ばした。

Keywords: 成長鈍化、低価格化、スマートフォン化、小米、異業種間提携
 
第2章 電子デバイス
2014年は中国政府にとって、先端ICの国産化を重要な政策課題と位置づけた年となった。中国が、30年に世界のトップメーカーと並ぶ企業を輩出するという目標を掲げたのである。背景には、メーカー別シェアでは拡大している中国産(中国メーカーの自社ブランド)スマートフォン(スマホ)でも依然として輸入チップが多く使用されていることなどの危機感がある。スマホ用やタブレット端末用など最先端の電子機器分野でも世界の工場である中国では、IC需要が増加しているがその大半を輸入に依存している。この現状を打破するべく、先端ICの国産化に向けて動き出したのが14年である。14年がIC産業で大きく動いた1年であったのに対して、大型液晶パネル産業ではあまり大きな動きがない1年となった。供給過剰感から大型液晶パネルでは設備投資は控えめとなった。ただし、伸びるスマホ向け需要を狙って中小型パネルの投資は活発化した。また、太陽電池パネル産業では、14年も首位の交代があり、依然として中国メーカーの投資は活発である。

Keywords: IC、大型液晶パネル、太陽電池パネル、国産化、IC産業ファンド
 
第3章 ソフトウエア
中国の経済成長が「新常態(ニューノーマル)」の段階に入る中で、政府は新たな成長エンジンとして「ネットワーク強国(網絡強国)」を目指す方針を打ち出した。ネットワークセキュリティを確保するためにソフトウエアの国産化を推進するとともに、クラウド分野のイノベーションやサービスアウトソーシング分野の拡大を促進する政策を実施している。このような背景から、中国全体の経済成長が減速する中でも2014年のソフトウエア及び情報サービス産業の成長率は20.2%、サービスアウトソーシング産業の成長率は27.4%を維持している。最新動向としては、スマート端末の急速な普及により様々な「スマートアプリケーション(スマートアプリ)」が国民の日常生活に浸透し、利便性の向上に大きく寄与している。また、インターネットサービス分野のリーディングカンパニーである「BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)」がネットだけでなく関連するリアル分野でのM&A(合併買収)を加速する一方で、伝統的なソフトウエア企業もインターネットサービス分野の取り込みを図っている。

Keywords: ネットワーク強国(網絡強国)、スマートアプリケーション、BAT(Baidu、Alibaba、Tencent)
 

第6部 金融

第6部 金融
 
第1章 銀行
2014年の金融政策を回顧すると、(1)農村・小規模企業に対象を絞った金融緩和、(2)預貸比率規制の緩和、(3)中長期資金を供給する金融調節ツールの導入――など多様な手法で緩和方向への金融調節が続けられてきたが、住宅価格の下落に伴い、11月からは2年以上振りに利下げ、預金準備率引き下げが行われた。また、習近平政権の改革路線に従い、銀行改革の面でも、(1)民間銀行開業、(2)預金保険制度の創設、(3)上海自由貿易試験区での金融自由化先行実施、(4)外資系銀行に対する規制緩和――などで進展があった。さらに、当局はシャドーバンキングに対しては規制を強化し、拡大ペースを減速させる一方、3月には初の社債デフォルトを容認したが、最終的に投資家の損失は回避された。すでにシャドーバンキングの規模は大きく、資金流出による混乱を考えれば軽々には処理し難くなっている。なお、インターネットバンキングも急拡大しており、当局に対応を迫っている。

Keywords: 金融緩和、民間銀行、預金保険制度、シャドーバンキング、インターネットバンキング
 
第2章 証券
2014年末時点の日中株式市場の時価総額は、日本が4兆3,780億ドル、中国が6兆49億ドルとなった。2014年の株式売買代金は、日本が5兆4,439億ドル、中国が12兆261億ドルとなった。2014年の株式市場での国内分・海外分の資金調達は7,060億元となった。クロスボーダーの証券取引では、QFII(適格外国機関投資家)は2015年3月末時点で267社が合計721億4,900万ドルの運用枠を取得し、うち日本勢は19社、26億400万ドルとなっている。RQFII(人民元建て適格外国機関投資家)は2015年3月末時点で111社が合計3,298億元の運用枠を取得している。2014年12月末時点のQDII(適格国内機関投資家)による日本株投資残高は5,500万元となった。14年のトピックとしては「資本市場の健全な発展を更に促進するための国務院の若干の意見」(新9条意見)が5月に国務院から公表されたことが挙げられる。2020年に向けた資本市場の改革プランを明らかにしたもので、外資参入規制の緩和、クロスボーダー証券取引制度の利便性向上などのテーマに証券業界の関心が集まっている。また、「上海・香港ストックコネクト」、通貨人民元の自由交換性実現に向けた動きからも目が離せない。

Keywords: A株、新9条意見、合弁証券会社、QFII(適格外国機関投資家)、RQFII(人民元建て適格外国機関投資家)、QDII(適格国内機関投資家)、上海・香港ストックコネクト
 
第3章 損害保険
2014年の収入保険料は、10年前の約7倍の規模に成長しており、2013年度時点の数字ではあるが、世界ランキング第3位となっている。しかしながら、GDP(国内総生産)に占める保険料割合は、アジア諸国・地域と比べると低水準であり、急速に成長している市場ではあるものの、普及率は依然として低く、開発余地の大きい市場との位置づけに変化はない。本章では、急成長を遂げる損害保険市場の現状、モータリゼーションの急加速に伴い拡大する自動車保険の経営状況、昨今取り締まりが強化されている保険仲介市場の現状などについて紹介する。また、保険業における監督当局である中国保険監督管理委員会(保監会)による監督管理状況についても詳説する。

Keywords: 自動車保険市場の経営状況、内陸部の成長、M&A解禁、新国十条(国務院)公布、監督管理強化
 

第7部 物流・運輸

第7部 物流・運輸
 
第1章 物流
2013年に続く輸出入の伸び悩みと中国の国内経済の低成長により、2014年の貨物取扱量はトンベース、トンキロベースとも小幅増にとどまった。うち、水上輸送がトンキロベースで大きく伸ばしたのに対し、鉄道の輸送量は前年比マイナスになるなど、輸送モードによって明暗が分かれている。他方、eコマース(電子商取引)の発達により、前年に続き、小口貨物市場が急速な成長を見せ、全体の物流市場を牽引する役割を果たしている。さらに、国策として進めている「一帯一路」は物流分野にも大きな影響を与えている。2013年に続き、中西部大都市を起点とするチャイナ・ランド・ブリッジは着実に運行実績を積み上げ、新たな中国発欧州までの国際物流のルートの利用の可能性を提示した。

Keywords: 鉄道貨物輸送、水上貨物輸送、小口貨物市場、中西部の交通インフラ整備、一帯一路
 
第2章 港湾物流・外航海運
中国の商船隊は世界第3位の規模になって久しく、首位のギリシャ、第2位の日本に肉薄しつつある。中国関連貨物は世界の海上輸送のかなりの割合を占め、中国の経済・産業事情を太陽とするならば、世界の外航海運はその惑星である。中国は先進国の扉の前に立った。したがって、貨物輸送としての中国関連の外航海運は成熟の域に達したといえるだろう。港湾の整備も同様である。しかし、豊かな社会の産業であるクルーズ産業は、これから中国で花開き、衆目の一致するところでは、そう遠くない将来に世界最大の規模となる。2014年にはその未来に向けて大きな動きがあった。中国を起点とするクルーズ船は、日本へ大量の富裕層の中国人観光客をもたらす。日本側はその受け入れ態勢を整えることが必要である。

Keywords: 世界第3位の中国商船隊、中国社会の成熟、世界最大のクルーズ市場、クルーズ埠頭の整備、大量の外客来日
 
第3章 鉄道
中国の鉄道は、普通鉄道(高速鉄道含む)として国家鉄路(旧鉄道部、現中国鉄路総公司)、合資鉄路、地方鉄路があり、その他鉄道として都市鉄道(地下鉄、モノレールなど)がある。普通鉄道の営業路線延長は、2013年現在10万3,000キロで世界第2位(世界第1位は米国)の鉄道国である。また、高速鉄道(最高時速200キロ以上)は、2013年現在約1万1,000キロが営業中で、その距離は前年に比して2,000キロ増加した。世界第1位の高速鉄道王国であり今後も拡大する計画がある。国家鉄路の特徴を収入から見ると、貨物が主で旅客が従であり、大半の収入が旅客である日本とは異なっている。収入の49%は貨物輸送(旅客収入は39%)で、石炭を始めとする鉱物資源輸送が主体となっており、その収入の伸び率は14%である。一方旅客収入の伸び率は、高速列車の増により18%となっており、今後とも旅客収入が拡大することが想定される。2013年の鉄道関係の固定資産投資額は約6,900億元で前年比約5%増であり、今後とも政府の内需拡大政策による大幅な鉄道建設投資が計画されている。鉄道部は2013年3月、行政部門は交通運輸部に移管されて国家鉄路局となり、鉄道の運営管理は独立した中国鉄路総公司(100%国家資本)となり、中国鉄道部は解体された。車両生産部門である中国南車公司と中国北車公司は、合併して中国車両公司となり、世界最大の車両メーカーが誕生することとなった。世界の鉄道車両市場に大きな影響力を有する存在となりそうである。

Keywords: 中国鉄道概況、中国鉄道総公司、輸送状況、高速鉄道、鉄道建設投資額
 
第4章 航空
中国の航空輸送産業は、中国の経済的発展に伴って成長を続けている。北京、上海、広州の3大都市のみならず、沿海部の主要空港は慢性的な混雑状態にあり、新たな空港整備や滑走路増設などが次々と計画されている。2014年12月に着工した北京第2空港は2019年の供用開始が予定されている。日中間の航空旅客の流動は、両国間の政治問題、東日本大震災、中国の大気汚染問題などによって、ここ数年は不安定な増減となっていたが、2014年には中国から日本への渡航者が飛躍的に増加した。この傾向は今後も継続すると見込まれる。中国の航空会社は、この数年で新規設立や既存会社の系列会社への分社化などにより計50社以上となり、過去最大となった。勢力を伸ばしつつあるローコストキャリア(LCC)を含めた航空会社間の競争に加え、整備が進む中国国内高速鉄道との競争激化が予想される中で、今後の動向が注目される。中国の航空会社では機内インターネット環境の整備が進んでおり、大規模な新規ビジネスに発展する可能性がある。

Keywords: 訪日者数拡大、日中航空路線、中国4大グループ系列航空会社、LCC
 

第8部 特別レポート

第8部 特別レポート
 
自動車リサイクル産業
中国では循環経済の促進が提唱される一方、急速な自動車の普及に伴って、使用済み自動車(ELV)を取り巻くビジネスも近年注目を集めている。自動車産業の発展に伴いELVの違法流通や中古部品の不適切な再利用に伴う事故増加などの問題が顕在化し、ELVの回収管理を厳格化するに至り、現行法を修正した「廃棄自動車回収解体管理条例」の登場が待たれている。また、ELV関連データを分析すると、解体作業の非効率性や非合法セクターへのELV流出、部品再利用率の低さなどの課題が山積していることが示唆された。この分野においては、省エネルギー・環境の一環での循環経済の促進が提唱されるなかで日中協力の期待も高まりつつあり、実際ビジネスの先行事例もある。今後の当該産業の健全な発展のためには、中国のELVリサイクル企業自らが政府とともに、制度改革に係わっていくことが重要である。

Keywords: 循環経済、使用済み自動車(ELV)、リサイクル、廃棄自動車回収解体管理条例、5大総成(部品)のリビルド
 

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本書は、2011年以前は『日中経済交流』、2012年以降より『日中経済産業白書』に改称されました。
 
 

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